一年前には分からなかったこと。

ある日の仕事中、椅子に座ったまま考え事をしていた。もう少しで何か大事なことが、掴めそうだと、しばらく座っていたけれど、考えが混乱してきたところもあったため、一時間ほど休憩をとることにした。

軽食を挟みながら、1年前に読み終わっていた本に目を向ける。その本は、読み返そうと思いつつも、いつも新しい書籍を読むために後回しになっていた。小さなドーナツをかじりながら、懐かしい表紙を眺めた後にページをめくっていく。

さて、数ページほど読んだところで気がついた。こんな重要なことについて自分は全く知らないと。つまり、1年前に文字を目で追い、読み終えた気になっていたそれは、実際のところ1pすらまともに読めてなんかいなかった。時間と経験が必要だったのだろうか。

この本を4分の1ほど読み進めたとき、今まで混乱していた考えたちが、静かに整理されていた。気がつけば、ノートにそれを書き写すために、僕は椅子のところへ戻っていた。